KINJI TERAMOTO and JAPANESE HAND WORKS
現在開催中のイベントについて、会期は今週末までとなってしまいました。
既に旅立ったモノも多いですが、改めてこの場でご紹介致します。
寺本欣児と日本の手仕事

日本には、その土地でしか生まれないものがあります。
風土によって育まれた素材。
長い時間をかけて磨かれた技術。
そして、暮らしのなかで受け継がれてきた知恵。
衣服も、家具も、器も、籠も、もともとは人々の暮らしのなかで使われる道具です。
しかし、日々使われるために生まれたものには、ただ飾って眺めるだけでは見えてこない美しさがあります。
手に取り、身につけ、腰掛け、花を生け、ものを入れて持ち歩く。
その時間の積み重ねによって、道具は少しずつ使う人の生活に馴染んでいきます。
今回ANATOMICA TOKYOでは、寺本欣児が共感してきた日本各地の手仕事をご紹介いたします。
寺本欣児

ANATOMICA JAPANを率いる寺本欣児は、長年にわたり世界中のヴィンテージウェアや民芸品、工芸品を蒐集しながら、本物とは何かを探求し続けてきました。
彼が見つめてきたものは、単に古いものや希少なものではありません。
その土地でしか生まれなかった必然性。
使われるために考え抜かれた形。
時間を経てもなお、暮らしのなかで力を失わないもの。
それらは、流行や効率だけでは測ることのできない価値を持っています。
今回の展示は、いわゆる工芸展ではありません。
衣服、家具、籠、陶器、植物。
それぞれ異なる土地や素材から生まれたものを通して、暮らしの中にある美しさを見つめ直す試みです。
石巻工房


石巻工房は、2011年の東日本大震災をきっかけに、宮城県石巻市で誕生しました。
当初は、地域の人々が自らの手で家具や生活道具をつくり、修理するための公共工房として始まりました。
シンプルで実用的な家具づくりを通じて、コミュニティの再生を支えること。
それが石巻工房の原点です。
その家具は、過度な装飾を持ちません。
けれど、日々の暮らしのなかで使うための強さと、まっすぐな美しさがあります。
座る。置く。運ぶ。集まる。
家具はただの物ではなく、人の行為を受け止める道具でもあります。
石巻工房の家具には、ものづくりを通して人と人をつなぐという思想が息づいています。
宮本工芸


宮本工芸は、1947年の創業以来、青森県津軽地方に伝わるあけび蔓細工と山ぶどう細工を作り続けています。
津軽の山々で採取されるあけび蔓や山ぶどうの皮は、古くから人々の暮らしを支える生活道具の素材として用いられてきました。
宮本工芸の籠は、熟練した職人の手によって一つひとつ丁寧に編み上げられます。
堅牢でありながら美しく、使い込むほどに艶を増し、持ち主とともに歳月を重ねていく。
新品の状態が完成形なのではありません。
手に持ち、日々使い、時間をかけて育っていくこと。
そこに、山ぶどう籠の大きな魅力があります。
今回はこれらに加えて、ANATOMICA用に胡桃のバッグも特別に作成頂きました。
自然の恵みを無駄なく活かし、長く使い続けるために作られた籠。
それは単なる工芸品ではなく、土地の風土と人々の暮らしの記憶を今に伝える生活道具です。
境道一


境道一氏は、長野県須坂市に生まれ、備前焼作家・正宗悟氏に師事したのち、故郷で穴窯を築窯。
現在は香川県に拠点を移し、作陶を続けています。
薪窯で生まれる作品は、土と炎の力をそのまま映し出します。
ふくよかな表情をもつ織部や粉引、ミモザの灰を用いた独自の釉薬。
人の手だけではなく、火や灰、土の状態によって生まれる表情があります。
花器は、花を生けて初めて空間の中で呼吸を始めます。
そこにあるだけで完結するものではなく、花や植物、光、環境と相互に関係しながら、暮らしの中に静かな奥行きを与えてくれます。
境知子


境知子氏は、香川県に生まれ、和歌山県にて森岡成好氏に師事。
香川県で穴窯を築窯し、長野県須坂市での作陶を経て、現在は再び香川県に窯を構えています。
焼き締めや白磁を中心に生み出される花器には、力強さと端正さ、そしてやわらかな温度があります。
花を生ける。
植物を置く。
部屋の中に小さな余白をつくる。
器は、食卓や棚の上で、日々の暮らしの気配を受け止めます。
境知子氏の作品は、空間に凛とした表情を与えながらも、生活の中に自然に溶け込んでいきます。
ANATOMICA GARMENTS


今回のイベントでは、ANATOMICAを象徴するメイドインジャパンのデニムを中心とした洋服もご覧いただけます。
特にANATOMICAのデニムは、ディレクターであるピエール・フルニエと寺本欣児を結び付けるきっかけとなった特別な存在です。
15ヶ月以上の歳月をかけて完成した「618 ORIGINAL」は、ANATOMICAにとって初めてのデニムであり、二人によるものづくりの出発点となりました。
人体の構造に基づいたフィッティング。
ヴィンテージへの深い敬意。
そして、日本国内の確かなものづくり。
ANATOMICAのデニムもまた、ただ眺めるためのものではありません。
穿き、歩き、洗い、時間を重ねることで、その人自身の一本になっていきます。
家具や籠、陶器と同じように、使われることで完成していく道具なのです。
Why ANATOMICA

ANATOMICAは洋服屋です。
それでも今回、家具や籠、陶器をご紹介する理由があります。
「民藝・工芸・用の美」など色々な言葉が生まれては、時々マーケティングのラベルのようにも使われます。
もちろん、それぞれの言葉には歴史ときちんとした意義がありますが、今回は誤解を生まぬように「手仕事」という言葉を使いました。
私は衣服と工芸、あるいは道具と美術を、明確に切り分けて考えてはいません。
人の生活に深く根ざし、使われることで豊かな経験を生み出すものには、共通した美しさがあると考えています。
どれも、人の暮らしのために生まれたものです。
身体に沿う服。
腰掛けるための椅子。
花を生けるための器。
ものを入れて持ち歩く籠。
それぞれ形は違っても、根底には「より良い暮らしをつくる」という共通した思想があります。

ANATOMICAが大切にしてきたのは、流行に左右されないもの。
長く使うことができ、使うほどに自分の生活に馴染んでいくもの。
そして、その背景に確かな理由と作り手の眼差しがあるものです。
今回ご紹介する日本の手仕事も、同じ線上にあると考えます。
美しさは、完成された作品の姿だけにあるのではありません。
使うこと。
触れること。
暮らしの中で時間を重ねること。
作り手だけでなく、使い手の経験のなかで、相互に関係しあい、ものの価値は少しずつ深まっていきます。
長く使われることで、作り手の意図は使い手へと受け継がれ、ものは経験の連続性を宿していきます。
「寺本欣児と日本の手仕事」。
この機会が、日本の手仕事をただ見るだけではなく、実際に暮らしの中で使うことを想像するきっかけとなれば幸いです。
Event Information
寺本欣児と日本の手仕事
Supported by ANATOMICA & Rurbanism
6月20日(土)〜 28日(日)
ANATOMICA TOKYO FLAGSHIP STORE
東京都中央区東日本橋2-27-19 Sビル1F
残りの会期は数日となってしまいましたが、
皆さまのお越しを心よりお待ちしております。